メッキとは?めっき加工の歴史や種類、その役割について

メッキとは、物体の表面に金属の被膜を作る技術のことです。ご存じのように、メッキ加工を施すことで、物体を美しく見せることができますが、もちろんそのほかにもメッキには役割があります。この記事では、メッキ加工の歴史や種類、また、その役割についてご紹介します。

メッキとは?

メッキ加工

メッキとは、物体の表面に金属の被膜を作る表面加工技術のことです。メッキには、物体を美しく見せる「装飾」や「腐食の防止」、そして「機能の追加」などの役割がありますが、細かく見ていくと、さらにたくさんの役割を担っていることがわかります。この記事では、メッキ加工が生まれてから現在に至るまでの歴史、メッキ加工の種類、そしてその役割についてご紹介していきます。

メッキ加工の歴史

メッキ加工は、文明が生まれた頃から存在する、ひじょうに長い歴史を持つ技術です。約3500年前、メソポタミア文明において、我々人類は、すでにシンプルなメッキの技術を身につけていました。遠くメソポタミアで生まれたメッキ加工の技術は、西アジアや中国を経由し、仏教と共に日本に伝わりました。メッキは本来、漢字で表す場合は「滅金(めっき・めっきん等)」と書きますが、このメッキが日本で使われ始めたのは古墳時代のことだと考えられています。「アマルガム」と呼ばれるメッキ加工の方法で、古墳から出土した青銅器の中には、金メッキされたものが多く見つかっています。
また、奈良の大仏様に代表される『大仏』も、メッキが施された作品として知られています。大仏様にはあまり金色のイメージを持つ方はいらっしゃらないかもしれませんが、実は建立当初は金色でした。この金色は先程の青銅器同様のアマルガムによるものでした。奈良の大仏様と言えば、高さが16メートル、幅12メートルという巨大さ。全体のメッキ加工が終わるまで約6年かかったという壮大な作品なのです。
アマルガムというメッキ加工の方法は、金と水銀をミックスした物質をメッキする物体の表面に塗り、その後、熱を加えて水銀を蒸発させることで金だけを物体表面に残します。
日本では、アマルガムを使ったメッキ加工が江戸時代に至るまでの長い間行われ、刀剣や装飾品、仏具などに施されてきました。しかし、江戸時代も末期となり、文明開化の足音が聞こえ始めると、薩摩の島津家が日本で初めて、電気メッキを使いました。島津家では甲冑をメッキし、これ以降、アマルガムによるメッキ加工は、あまり行われなくなりました。電気メッキはその後、次々に新しい手法が生まれ、それと共に設備や技術も進化し、現在に至ります。
電気メッキ加工の原理は、初期の頃から変わりはありません。しかし、「腐食を防ぐ」「機能を加える」など、原理を応用することで進化を遂げてきたのです。もちろん、加工処理のスピードは、誕生当初の電気メッキとは比べることはできないほどアップし、しかもプロセスは、多くの場合、オートメーション化されています。

メッキ加工の種類

現在行われているメッキ加工の方法は大きく2種類に分けることができます。液体を使ってメッキ加工する「湿式メッキ」と、真空でメッキ加工する「乾式メッキ」です。

湿式メッキ

湿式メッキでは、液体の中にメッキする物体を浸して表面を加工します。湿式メッキには、以下のような方法があります。

・電解メッキ
電解メッキでは、金属の水溶液に直流電流を流すことでメッキの対象物表面に被膜を作ります。直流電流を流すと、金属のイオンが対象物表面に移動する作用を利用しています。
・無電解メッキ
無電解メッキは、イオンに置き換わりやすい物体(金属)を、他の金属の水溶液に漬け込むことで表面処理する「置き換えメッキ」、触媒の化学反応を利用して表面処理を行う「自己触媒メッキ」、化学反応のみを利用した「非触媒化学メッキ」が主な方法です。中でも自己触媒メッキは、パラジウムを利用することで、プラスチックにもメッキすることを可能にしています。パラジウムが触媒となり、プラスチック表面に金属の被膜を作ることができます。
・溶融メッキ
名前のとおり、金属を高温で溶融して、その中にメッキする物体を入れ、表面をコーティングします。分厚い被膜を作れることが特徴で、高い耐腐食性を誇ります。

乾式メッキ

乾式メッキは、主に「化学蒸着法」と「物理蒸着法」に分けることができます。乾式メッキでは、真空やプラズマという環境の中でメッキ処理を行います。

・化学蒸着法
化学蒸着法では、プラズマや熱により、ガスの状態で送り込んだ原料を反応させ、対象物表面に被膜を形成します。化学反応を利用することからこの名前が付けられていて、CVDとも呼ばれます。
・物理蒸着法
プラズマや熱を使って被膜にする原料を気化させ、基板表面に膜を作ります。原料を気化させる際、熱を使いますが、かなり高温にしないと金属は気体になってくれません。そのため真空に近い状態を作り出し、気化する温度を下げているのです。それでも1000度程度の高温にする必要がありますが、これには主に電子が使われます。真空に近い状態を作り出してメッキする方法を「真空蒸着法」と呼びます。
「イオンプレーティング」という物理蒸着法もあります。このイオンプレーティングでは、被膜となる金属を気化させた後、さらにプラズマ化(イオン化)することで、対象物表面への付着力を強めています。
さらにもう一つ、「スパッタリング」という物理蒸着法もあります。スパッタリングでは、不活性ガスを電子化して被膜の原材料に高速でぶつけると、原材料が「スパッタリング=弾ける」ことで対象物表面に被膜を作ります。対象物が単体の素材ではなく、複数の素材が混じり合った素材の場合によく使われます。

メッキ加工の役割

メッキ加工

メッキはさまざまな製品、用途に使われていますが、メッキすることの意味、すなわちメッキ加工の役割についてかんたんにご紹介します。

装飾効果と防錆効果

物体にメッキ加工することで美しく仕上げることができます。貴金属、ファッションアクセサリー、自動車やオートバイのパーツなどには、見た目を美しくするためのメッキ加工が施された製品がたくさんあります。また、メッキ加工を表面に施すことで、美しく見せると同時に腐食から表面を守ることができます。

電気や磁気をコントロール

コンピュータやスマホの電子回路には、メッキの技術が使われています。現在のスマホは、パーツの小型化、そして高性能化から生まれた製品と言えますが、これを支えているのがメッキの技術なのです。スマホの基板には薄い皮膜が使われていて、すべてのパーツを連携させる生命線としての役割を果たしています。また、磁気を使用するコンピュータ内部の記憶装置(ハードディスク)は、メッキにより外部からの磁気の影響を防いでいます。

物理的特性の付与

メッキすることで、物質表面に物理的特性を付与することができます。たとえば、多くの機械の部品は、使うことで摩耗していきますが、部品にメッキすることで耐摩耗性を向上させることができます。また、エンジンのパーツなどは、使用中、高温にさらされますが、メッキ処理を施すことにより耐熱性を向上させることができます。
そのほか、メッキは日常生活の一部としても私達を支えています。たとえば、食器などの抗菌コートもメッキの技術です。メッキにより金属の光具合をコントロールしたり、金属の耐性を強化したりすることも可能です。